⑥「津波で電源喪失」は疑問(福島原発事故)

⑥「津波電源喪失」は疑問

「1号機A系の電源喪失の原因は津波ではないと考えられる」
「1号機B系、2号機A系、3号機A・B系も電源喪失津波によるといえるかは疑問がある」報告書は、原子炉冷却に必要な発電所内の非常用交流電源が地震によって喪失した可能性を初めて明らかにしました。

運転員ら証言で

政府や東京電力は、電源喪失の原因は「津波」としています。政府や東電の報告では、福島第1原発への津波到達時間を第1波午後3時27分ごろ(波高4㍍のため1号機A系、2号機B系、4号機B系の電源喪失はあり得ない)、第2波同35分ごろとしていました。
国会事故調は、その根拠が沖合1・5㌔にある波高計の記録の時刻であることに着目。津波の速度計算や福島第1原発を襲う連続写真から到達時間は2分ほどの誤差(遅くなる)があると認定しました。
同時に事故調は、1号機の非常用ディーゼル発電機(「A系」「B系」の二つがある)の停止時間が運転日誌を基に午後3時37分とされていることも検討。運転日誌にはB系の停止時間しか記載はなく、運転員らの証言でA系はB系の1~3分前に停止していたことを明らかにしました。
この1~3分前の運転停止時刻は、報告書が新たに認定した津波到着時刻より前になり、津波を原因とすることはできないとしたのです。発電機が地震による変形や機器内部の軸のずれによる加熱、焼き付けで停止した可能性があることも指摘しています。
「非常用電源機器の詳細検査未了の段階で、津波がなければ全交流電源喪失に至らなかったとの見解に基づいて行動することは慎むべきである」
これまでの東電、経産省原子力安全・保安院の説明は、地震のあと原子炉が緊急停止、鉄塔倒壊などで外部電源喪失となり非常用ディーゼル発電で電源を確保し炉心の冷却は行われていたが、津波到来で非常用ディーゼル発電も使用不可能となり全交流電源が喪失し、炉心溶融に至った━というものでした。
これに対し、事故調は地震の影響を認め、地震を考えない事故検証にならないよう求めているのです。

冷却材漏れたか

独立行政法人原子力安全基盤機構は、原子炉容器内の配管に生じた微小な亀裂により冷却材が漏れて無くなる事故(LOCA)の可能性を指摘していました。同事故は炉心溶融に至る可能性があるものです。
報告書は、同様の事故が「1号機で起きた、可能性は否定できない」と述べています。その根拠として、1号機の運転員が異音を聞いていることや事故後の原子炉格納容器内を直接詳しく調査できていないことを挙げました。
「安全上重要な機器の地震による損傷はないとは確定的には言えない。引き続き第三者による検証が行われることを期待する」━報告書は求めています。(つづく)
(→pdfファイル
しんぶん赤旗2012.7.17)