④テレビ会議の一端公開(福島原発事故)

テレビ会議の一端公開

報告書は"東京電力本店、福島第1原発、他県の原発をつないで行われたテレビ会議の一端を明らかにしました。

「風向きを見て」

1号機の水素爆発後の3月13日、有効な対策を見いだせないまま3号機の爆発に至るテレビ会議の一部を再現すると━。
福島第1原発「天井・・・ヘリコプターできて、何か突き破らせる。使用済み(核)燃料が多少あったって、そちら(へリ)の方も選択する余地もあるかと思います」
本店「結局、火花が出て引火して爆発しても同じじゃないかと、それ心配しています」
柏崎刈羽原発「ヘリコプターのやつは賛成だけどね、風向き見て」
本店「コントロールできるってことですよね」
柏崎刈羽原発「うん、そうそうそう。爆発はするよ、でも風向きが良ければね」
本店「おっしゃるとおり、おっしゃるとおり。ヘリコプター落ちたら、元も子もないですから」
水素爆発対策では、給気ファンで原子炉建屋に空気を送り込み水素を排出する方法も検討していました。東電本店が「なかなか時間がかかりそう」との認識を示すと、福島第1原発吉田昌郎所長(当時)が「そんな悠長なことでいいのか」と迫る場面もあります。
国会事故調査委員会の委員らは検証の過程で、テレビ会議の記録映像を東電本店に出向き確認しました。

一部始終を記録

テレビ会議の記録映像は東電が社員らのプライバシー保護を理由に開示してきませんでした。しかし、事故の原因究明、事故対応の教訓を引き出す上で欠かせない重大記録。そこには事故直後の現場や本店などとのやりとりの一部始終が記録されています。福島第1原発からの「全員撤退」を危倶した菅直人首相(当時)が昨年3月15日に東電本店へ乗り込んだ際の映像も含まれます。
映像をめぐっては、東電側の全員撤退の意図を示す証拠になるとして、菅氏らが公開を求めていました。テレビ会議の一部を初めて公表した国会事故調報告書が発表されるなか枝野幸男経済産業相は10日の参院予算委員会で、「事実上の行政指導として、東京電力に公開を求めており、前向きに検討したいという報告を受けている」と述べました。
そんななか、東電は一転して、映像の公表を決定。幹部以外の一般の職員も映っているとして、公開する範囲、方法などを検討しています。(つづく)(→pdfファイル
しんぶん赤旗2012.7.14)
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⑤海水注入、「官邸グジグジ」

東京電力福島第1原発事故発生の翌日3月12日、官邸にいた東京電力幹部の武黒一郎フェロー(当時)から福島第1原発吉田昌郎所長(同)に電話がつながりました。

電話で「止めろ」

武黒「おまえ海水注入は」
吉田「やってますよ」
武黒「えつ」
吉田「もう始まってますから」
武黒「おいおい、やってんのか。止めろ」
吉田「何でですか」
武黒「おまえ、うるせえ。官邸が、もうグジグジ言ってんだよ」
吉田「何言ってんですか」報告書は、吉田所長の証言を基に、福島第1原発1号機への海水注入をめぐる生々しいやりとりを明らかにしました。そのころ、官邸では菅直人首相(当時)が、原子炉で核反応が継続して起きる「再臨界」の懸念を示し、内閣府原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長らが疑問解消にあたっていました。
海水注入は吉田所長の判断で続けられましたが、炉心を冷やすための淡水がなくなり、メルトダウン(炉心溶融)の危機回避へ、官邸、東電本店、福島第1原発の3者の連携もとれない混乱状態だったことが報告書で浮かび上がりました。
東電本店の高橋明男フェローが官邸の用意した消防車を使うよう求め、福島第1原発側からたしなめられる様子も描き出しています。
高橋「官邸対応の話だけど、早くその(消防車)2台現場に持って行って何か使ってほしいんだけどさあ」
吉田「物だけもらっても人がいないんですよ。かなり線量的なものもありますし」

結果責任を回避

報告書は以下のように述べます。「東電からの(官邸への)情報提供が十分に行われることはなかった。本店側は、現場の実情から判断される発電所の意思決定よりも、官邸や保安院の指示、要請に従うことで、事故対応で生じる結果責任を回避しようとする動きが見られた」
海水注入のやりとり以前に、1号機は炉心(核燃料)が溶融し、放射性物質の大量放出となります。12臼午後3時36分には1号機で水素爆発が起き、危機が重なっていきます。(つづく)(→pdfファイル
しんぶん赤旗2012.7.15)