②「虜(とりこ)の関係あぶり出す

②「虜(とりこ)の関係あぶり出す

「悩みどころは一致していると感じた。公式な検討会を設置するかもしれない。その前に、お互いに原着地点を見出したい」
原発シビアアクシデント(過酷事故・SA)対策の規制強化をめぐり、電気事業連合会(電事連)と経済産業省原子力安全・保安院は非公式な意見交換をしていました。公式な検討会設置を前に、電力会社の原子力部門担当副社長に対し、規制する立場にある保安院長が理解を示していた場面。国会事故調の報告書が電事連の資料から浮き彫りにした一幕です。

着地点探る間に

国会の事故調査委員会の報告書は、規制当局のトップが電力会社の虜(とりこ)になってしまっている暗部に踏み込みました。
チェルノブイリに次ぎレベル7の最悪規模となった福島第1原発事故。SA対策の規制強化は、2007年に国際原子力機関(IAEA)からの指摘などを受け検討が進められてきました。
2010年に電事連内の対策委員会は対応方針を検討。「SA規制化に関する事業者としての対応方針」では「追加設備などは必要ない」としました。東電は電事連の中心メンバー。報告書は、原子炉設置許可処分の取り消し訴訟が再燃する懸念が東電内に出ていたと明らかにしました。
冒頭の非公式な意見交換はこのときのもの。規制当局と電力会社が「着地点」を見いだしている間に福島第1原発事故が起きました。

立場逆転し崩壊

報告書が注目した、原子力部門担当副社長らと保安院長との非公式な意見交換。そのなかで保安院長は「現実に既存炉が到達できないことを要求するつもりはない」と述べていました。10年ごろの保安院長は寺坂信昭氏(福島第1原発事故時も保安院長)。
事故調の報告書は認定します。「安全文化とは相いれない検討が行われていた。原子力安全の向上を最優先に考えず、訴訟リスクや稼働率を優先する事業者と規制当局の姿勢が見受けられる」
稼働率優先とは、コスト優先のこと。安全上の問題より、原子炉稼働・電力供給による利益を優先する認識を事業者側と規制当局が共有し、規制強化を軽視する癒着が事故を招いたという指摘です。
「規制する立場とされる立場の『逆転関係』が起き、原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していた」。「崩壊」とまで厳しく認定した報告書。原子力を規制する側が「される」側に絡みとられ、手も足も出なくなった状況をあぶりだしました。(つづく)(→pdfファイル
しんぶん赤旗2012.7.11)