いまなぜ 「原発撤退」が必要か
震災・原発
いまなぜ 「原発撤退」が必要か
いまの技術は未完成で危険
Q 原発技術は未完成といわれていますが…。
今回の福島原発事故のように、大量の放射性物質がひとたび外部に放出されれば、抑える手段はありません。被害はどこまでも広がり、長期にわたって危険を及ぼす可能性があります。地域社会全体の存続そのものを危うくします。
そもそもいまの原発技術は、本質的に未完成で危険といわなければなりません。冷却水がなくなると炉心が溶けてコントロール不能となること、放射性物質=「死の灰」を原子炉内部に閉じ込めておく絶対かつ完全な技術が存在していないことも明らかになりました。放射性廃棄物の処理方法も未確立で、使用済み核燃料はたまる一方。原発が「トイレなきマンション」と呼ばれるのもそのためです。福島原発事故をふまえて、原発推進から撤退への決断が必要です。
地震・津波国なのに集中立地
Q 日本の原発建設は「異常」といわれますが…。
専門家は「日本は一大地震国です。歴史をみれば、全国で大きな地震がたびたび起こっており、基本的に原発立地にふさわしいところはないのです」(地震予知連絡会元会長の茂木清夫さん)といいます。日本の異常ぶりは、「震源域の真上にある原発は世界では承知していない」(寺坂信昭原子力安全・保安院長)という政府答弁からも明らかです。
政府・中部電力は、東海地震の予想震源域真上にある浜岡原発だけを一時停止しましたが、それ以外は「安全」でしょうか。美浜原発、敦賀原発、高速増殖炉「もんじゅ」は活断層から1キロ以内。そのほかの原発も震源域や活断層の近くにあります。原発集中立地の現実を放置したままでは危険はなくなりません。だからこそ速やかな撤退が必要です。
「安全神話」で深刻な結果に
歴代政府はこの「安全神話」にしがみつき、何ら安全対策をとってきませんでした。福島原発について日本共産党や市民団体が「津波で冷却機能が失われて重大事故になる危険がある」と繰り返し警告してきたのに、無視し続けました。現実に事故が起きてもその対応は後手に回り、放射能汚染、不自由な避難生活の拡大などをつくりだしました。
菅首相は、事故の検証も終わっていないのに「今回の事故を教訓に『最高度の原子力安全』を実現していく」(5月25日の経済協力開発機構のスピーチ)と述べ、停止している原発を再稼働させようとしています。しかも、原発をエネルギー政策の柱にする姿勢は変わっていません。
再生可能エネ切り替え可能
Q 撤退が必要なのはわかるが、原発なしで夏の電力は大丈夫なの?
A 電力に占める原発の比率は約3割で「原発をなくしたら大変だ」と宣伝されますが、これは年間の総発電量に占める割合。原発は出力調整がきかないため、危険な原発を最優先させ、目いっぱい稼働させてきた結果です。国内にある54基の原発のうち、現在稼働しているのは17基。それでも停電は起きていません。節電や原発以外の発電の余力で対応できているからです。
専門家も「(日本は)山がちで急流の河川が多く、森林資源は豊富で、ダムなしの中小水力発電所をつくる余地があり、太陽光も強く、海洋風力を含む莫大(ばくだい)な風力資源があります。地熱は世界3位の資源国です。政策によっては、原発を廃止し、再生可能エネルギー中心へと切り替えることも十分可能」(日本環境学会会長の和田武さん)とみています。
期限を切った計画に向けて
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Q 原発ゼロは難しいのでは?
政府が「すみやかに決断・実行する」ものとして、原発の新増設計画の中止、浜岡原発や福島第1・2原発の廃炉、老朽化した原発の運転中止とともに、住民合意のない原発の運転中止、放射性廃棄物の再処理施設の閉鎖、プルトニウム循環サイクルからの撤退を求めています。
また、原発ゼロにいたる期間に、原発事故の危険を最小限のものとするための、考えうるかぎり、可能な限りのあらゆる安全対策をとるとともに、そのための強力な権限と体制をもち、推進機関から完全に分離・独立した原子力の規制機関を緊急に確立することを求めています。
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