改定50年 これが日米安保条約/一から十まで従属の構造
改定50年 これが日米安保条約
一から十まで従属の構造
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19日は、1960年に旧日米安保条約を改定して、現行の日米安保条約が調印されてから50周年になります。全世界を覆っていた軍事同盟の多くが解体されるなか、日米両政府は今年、「日米同盟の深化」を進め、同盟の中核である安保体制を恒久化しようとしています。安保条約とは、どんなものか。歴史的経過と条文に照らして、その特徴を見ます。
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生い立ち 「対等」いうが裏で密約
現行の日米安保条約は、51年に調印された旧安保条約を改定したものです。法制上でも実態でも、日本の異常な対米従属の骨格となっている条約です。
旧条約は、45年に日本を軍事占領した米国が、戦後も米軍を駐留させ、反共軍事作戦の最前線基地とするためのものです。52年当時、米軍基地は沖縄を除く全国で2824カ所もありました。
日本政府は、この旧条約を「対等なものに改める」(岸信介首相=当時)ものだとして、新たに設けられた「事前協議」制度を宣伝しました。これは、在日米軍が「装備」や「配置」の「重要な変更」をする場合、日本側と事前に協議するというものです。
ところが日米両国は、その裏で密約を結び、核兵器の持ち込みも、日本からの戦闘作戦行動も、自由だと合意していたのです。事前協議制度はまったく実態のない、国民を欺く虚構でしかありませんでした。実際に、事前協議は一度も行われていません。
旧条約で「暫定的」だった基地使用を恒久化。日米の共同作戦を可能にしたり、経済面で日本を米国に従属させる規定まで設けました。米兵の特権的地位などを定めた日米地位協定も同時に結ばれました。
共同作戦 地球規模で一体化 〔5条〕
旧安保条約から現行条約に改定された際、新たに設けられたのが第5条の日米共同作戦条項です。両国は「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」が起こった場合、「共通の危険に対処するように行動する」としています。
旧安保条約が調印された51年には警察予備隊しかなく、「共同作戦」の条件はありませんでした。54年に自衛隊が創設され、日本再軍備が加速する中で設けられた条項です。
この後、78年の旧ガイドラインで日米共同作戦計画態勢が確立され、共同演習が盛んに行われるようになりました。97年の新ガイドラインでは、地理的な限定のない「周辺事態」で、自衛隊が米軍の戦争に自動参戦する仕組みがつくられ、安保条約は実質的に改定されました。
2001年以後、自衛隊は米軍の戦争を支えるため、イラクやインド洋など地球上どこへでも派兵する段階に入りました。03年には首脳会談で「世界の中の日米同盟」を確認しました。
08年に安倍晋三元首相の私的諮問機関が出した提言では、米国向けに発射された弾道ミサイルへの対処や、他国で攻撃された米軍の援護などを可能とするよう求めています。日米同盟の地球規模化を図る勢力にとっては、「日本施政下」という規定がある第5条でさえ、「同盟強化」の障害と映っています。
基地提供 全国どこでも自由使用 〔6条〕
第6条は、米軍への基地の提供を取り決めています。もともとが「基地貸与条約」としてつくられた安保条約の核心的部分です。
しかし、基地として提供する地域や、そこにつくる施設など、具体的なことは何も書いていません。米軍は「日本国において施設及び区域を使用することを許される」と規定しているだけです。
これは、「全土基地方式」と呼ばれます。米軍が占領下に勝手につくった基地の継続使用=占領の継続を認め、さらに日米間の同意があれば全国どこでも基地にできるという方式です。
このもとで80年以降、自衛隊基地を米軍との共同使用基地にする動きも進行。共同使用基地を含めた米軍基地の面積は2倍以上に広がりました。空港や港湾、広大な空域や海域も米軍の軍事利用に提供されています。
加えて第6条では、基地の使用目的にも事実上、限定がありません。米国は戦略上の必要があれば、日本の基地をどんな作戦目的に使ってもよい仕組みになっています。これは「自由出撃」態勢と呼ばれます。
実際、在日米軍基地には、海兵遠征軍、空母打撃群など、「日本防衛」とは関係のない海外遠征を専門にした“殴り込み”部隊が置かれ、米世界軍事戦略の一大拠点になっています。こうした部隊が配備されている米同盟国は日本だけです。
経済協力 介入制度化 軍拡も要求 〔2、3条〕
60年の条約改定で第5条以外に新設された条項に、第2条と第3条があります。
第3条は、「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を…維持し発展させる」として日本の軍備増強を義務付けています。この条項は、米国が日本に対し自衛隊の強化、軍事費の拡大を要求する根拠とされました。
第2条は、日米間の「国際経済政策におけるくい違いを除く」、「経済的協力を促進する」と規定。日本の経済政策への米国の不当な介入を許し、世界に例のない経済的従属が制度化されました。
廃棄OK 「すべて撤退」通告のみ 〔10条〕
第10条は、「(安保)条約が10年間効力を存続した」70年6月以後は、一方の国が「条約を終了させる意思を通告」しさえすれば、通告から1年後に廃棄できると定めています。
今日の沖縄の米軍普天間基地の問題でも明らかなように、一つの基地の返還でも米国の合意が必要ですが、米軍基地を根こそぎ日本から引き揚げさせるには、日本の国民と政府の意思だけでできるのです。
一から十まで従属の構造
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19日は、1960年に旧日米安保条約を改定して、現行の日米安保条約が調印されてから50周年になります。全世界を覆っていた軍事同盟の多くが解体されるなか、日米両政府は今年、「日米同盟の深化」を進め、同盟の中核である安保体制を恒久化しようとしています。安保条約とは、どんなものか。歴史的経過と条文に照らして、その特徴を見ます。
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生い立ち 「対等」いうが裏で密約
現行の日米安保条約は、51年に調印された旧安保条約を改定したものです。法制上でも実態でも、日本の異常な対米従属の骨格となっている条約です。
旧条約は、45年に日本を軍事占領した米国が、戦後も米軍を駐留させ、反共軍事作戦の最前線基地とするためのものです。52年当時、米軍基地は沖縄を除く全国で2824カ所もありました。
日本政府は、この旧条約を「対等なものに改める」(岸信介首相=当時)ものだとして、新たに設けられた「事前協議」制度を宣伝しました。これは、在日米軍が「装備」や「配置」の「重要な変更」をする場合、日本側と事前に協議するというものです。
ところが日米両国は、その裏で密約を結び、核兵器の持ち込みも、日本からの戦闘作戦行動も、自由だと合意していたのです。事前協議制度はまったく実態のない、国民を欺く虚構でしかありませんでした。実際に、事前協議は一度も行われていません。
旧条約で「暫定的」だった基地使用を恒久化。日米の共同作戦を可能にしたり、経済面で日本を米国に従属させる規定まで設けました。米兵の特権的地位などを定めた日米地位協定も同時に結ばれました。
共同作戦 地球規模で一体化 〔5条〕
旧安保条約から現行条約に改定された際、新たに設けられたのが第5条の日米共同作戦条項です。両国は「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」が起こった場合、「共通の危険に対処するように行動する」としています。
旧安保条約が調印された51年には警察予備隊しかなく、「共同作戦」の条件はありませんでした。54年に自衛隊が創設され、日本再軍備が加速する中で設けられた条項です。
この後、78年の旧ガイドラインで日米共同作戦計画態勢が確立され、共同演習が盛んに行われるようになりました。97年の新ガイドラインでは、地理的な限定のない「周辺事態」で、自衛隊が米軍の戦争に自動参戦する仕組みがつくられ、安保条約は実質的に改定されました。
2001年以後、自衛隊は米軍の戦争を支えるため、イラクやインド洋など地球上どこへでも派兵する段階に入りました。03年には首脳会談で「世界の中の日米同盟」を確認しました。
08年に安倍晋三元首相の私的諮問機関が出した提言では、米国向けに発射された弾道ミサイルへの対処や、他国で攻撃された米軍の援護などを可能とするよう求めています。日米同盟の地球規模化を図る勢力にとっては、「日本施政下」という規定がある第5条でさえ、「同盟強化」の障害と映っています。
基地提供 全国どこでも自由使用 〔6条〕
第6条は、米軍への基地の提供を取り決めています。もともとが「基地貸与条約」としてつくられた安保条約の核心的部分です。
しかし、基地として提供する地域や、そこにつくる施設など、具体的なことは何も書いていません。米軍は「日本国において施設及び区域を使用することを許される」と規定しているだけです。
これは、「全土基地方式」と呼ばれます。米軍が占領下に勝手につくった基地の継続使用=占領の継続を認め、さらに日米間の同意があれば全国どこでも基地にできるという方式です。
このもとで80年以降、自衛隊基地を米軍との共同使用基地にする動きも進行。共同使用基地を含めた米軍基地の面積は2倍以上に広がりました。空港や港湾、広大な空域や海域も米軍の軍事利用に提供されています。
加えて第6条では、基地の使用目的にも事実上、限定がありません。米国は戦略上の必要があれば、日本の基地をどんな作戦目的に使ってもよい仕組みになっています。これは「自由出撃」態勢と呼ばれます。
実際、在日米軍基地には、海兵遠征軍、空母打撃群など、「日本防衛」とは関係のない海外遠征を専門にした“殴り込み”部隊が置かれ、米世界軍事戦略の一大拠点になっています。こうした部隊が配備されている米同盟国は日本だけです。
経済協力 介入制度化 軍拡も要求 〔2、3条〕
60年の条約改定で第5条以外に新設された条項に、第2条と第3条があります。
第3条は、「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を…維持し発展させる」として日本の軍備増強を義務付けています。この条項は、米国が日本に対し自衛隊の強化、軍事費の拡大を要求する根拠とされました。
第2条は、日米間の「国際経済政策におけるくい違いを除く」、「経済的協力を促進する」と規定。日本の経済政策への米国の不当な介入を許し、世界に例のない経済的従属が制度化されました。
廃棄OK 「すべて撤退」通告のみ 〔10条〕
第10条は、「(安保)条約が10年間効力を存続した」70年6月以後は、一方の国が「条約を終了させる意思を通告」しさえすれば、通告から1年後に廃棄できると定めています。
今日の沖縄の米軍普天間基地の問題でも明らかなように、一つの基地の返還でも米国の合意が必要ですが、米軍基地を根こそぎ日本から引き揚げさせるには、日本の国民と政府の意思だけでできるのです。