米証券大手破たん

アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破たんし、ニューヨークをはじめ世界の株式市場が大幅に下落した。

 ニューヨーク市場の十五日の下落幅は五〇〇ドルを超え、二〇〇一年の9・11同時テロ以来の大きな下落率を記録した。これを受けて十六日の東京市場では、日経平均株価が六〇〇円余りも値下がりした。外国為替市場ではドル売りが進み、大幅な円高・ドル安となっている。

 「リーマン・ショック」はアメリカの金融・経済危機の深刻さを改めて浮き彫りにしている。

米史上最大の倒産
 リーマン・ブラザーズは、企業の株式・債券の発行や合併・買収で稼ぐ「投資銀行」と呼ばれる金融機関だ。

 規模は全米第四位、一八五〇年創業の老舗である。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅ローン)の破たんで巨額の損失を抱えた。

 過去に何度も陥った経営危機や、ニューヨーク本社の移転を余儀なくされた同時テロの被害にも、リーマン・ブラザーズは生き残ってきた。しかし、サブプライムローンで極限に達したアメリカ経済の投機化の主役の一人となり、荒かせぎした揚げ句、バブル崩壊でついに命脈を絶たれた。

 リーマン・ブラザーズが抱える負債は六十兆円に上り、アメリカ史上最大の企業倒産だ。米英は一九八〇年代から国際金融市場の自由化に乗り出し、投機マネーが国境を超えて膨張する経済の「カジノ化」を推進してきた。投機マネーは東アジアでは通貨危機を引き起こし、アメリカでも大手ヘッジファンド(国際投機集団)の破たん、IT(情報技術)バブルの崩壊など経済危機を招いている。

 投機マネーは敏感に大もうけのにおいをかぎとり、“後は野となれ山となれ”で市場を荒らし、バブルが崩壊すれば新たなバブルに向かう。その行き着いた先が、サブプライムローンによる証券バブルだ。焦げ付きの危険が高いローンを組み込むことで「ハイリターン」を確保し、関連の格付け会社が安全を保証して「ローリスク」を演出することで世界中に広がった。

 「悪魔の知恵」と呼ばれるやり方で低所得層を巻き込んでつくった、だれも本当の価値が分からない金融商品を世界にばらまいて利益を吸い尽くす―。それほど腐り切った資本主義なのだ。ゆきづまるのは当然である。

 リーマン・ブラザーズと同じく経営危機に陥っているメリルリンチ(米投資銀行三位)は、商業銀行に吸収合併されることになった。保険の世界最大手・米AIGなどの経営危機が表面化する恐れが指摘されている。「リーマン・ショック」が今後、どう波及するのかは予断を許さない。

問われる対米追従
 米ブッシュ大統領は「短期的には痛みを伴うが、長期的には調整に自信を持っている」とのべている。しかし、アメリカ経済は、産業を空洞化させて財政赤字貿易赤字を垂れ流し、金融投機で世界の富を引き寄せ、貧富の格差を広げながら繁栄を続けてきた。問われているのは、そんな「カジノ資本主義」の持続可能性であり、アメリカ型に追従する日本の経済運営だ。