ニューヨーク・フィル「新世界から」を携え平壌を訪れた!

「新世界から」の名で知られるドボルザーク交響曲9番は、1893年末に初演されました。管弦楽は、ニューヨーク・フィルでした。

 新世界の大陸アメリカに音楽を教えに来た作曲家が、故郷チェコボヘミアへの思いを音でつづりました。郷愁と生命力に満ちた曲想。やがてそれは、国境を越えて人々の心をとらえていきました。

 初演の栄誉をになったニューヨーク・フィルが「新世界から」を携え、はじめて北朝鮮平壌を訪れました。アメリカを代表する作曲家ガーシュインの「パリのアメリカ人」、朝鮮民謡の「アリラン」も演奏されました。まるで、国交が結ばれたかのような曲目です。

 ニューヨーク・フィルの歴史に、時々の世界がみてとれます。ナチスユダヤ人狩から逃れてきた巨匠ワルターもよく指揮し、戦後は顧問になりました。1990年に東西ドイツが統一されると、東ドイツ民主化運動で活躍したクルト・マズアを常任指揮者に迎えます。北朝鮮と韓国で演奏する今度の楽旅は、平和なアジアへの流れのひとこまと記録されるでしょうか。

 交響曲「新世界から」はチェコ音楽と黒人霊歌などアメリカ音楽の出あいから生まれました。両者が溶け合う、万人の胸を打つ新しい音楽世界。ニューヨーク・フィル黄金期の指揮者バーンスタインの次の言葉が思い出されます。

 ”音楽は人間のもっとも深遠な言語活動である”。彼は、音楽による人と人との結びつきを信じていました。